ヴェクターの実力

 スント・ヴェクターは、コンパス製造で得た知識と高度な技術を駆使したリストップコンピュータ(腕につけるコンピュータ)として満を持して1999年に発売された。標高9000mまで計測可能な高度計、気圧/温度計、デジタルコンパスとバブルレベル(水準器)を搭載し、アウトドアで必要な情報を教えてくれるオールラウンドモデルだ。強化アクリル製のディスプレイは、直径34mmと大型で見やすい。

 腕時計の歴史を語る上で、戦争が与えた影響を否定することはできない。女性の装飾品だった腕時計は、第一次大戦の航空機登場によりナビゲーションに必要となる正確な時間を知らせる道具になった。第二次大戦では、管理された時間の元で組織化された戦闘が繰り広げられ、腕時計は兵士達の必需品になる。しかし相変わらず高級品だった腕時計は、将校や一部の特殊な兵隊達の物だった。
 ベトナム戦争で登場したディスポーザブルウォッチ(使い捨て時計)は、腕時計の「高級品」という概念を根底から変えた。壊れた時計を修理するより、新しい時計を支給した方が効率が良い。この合理的な発想が、コストを抑えたディスポーザブルウォッチを生み出した。また水中破壊部隊(現在のSEALの前身)のために、防水性や防磁性を持たせた専用の時計は、後にダイバーズウオッチとしてひとつのカテゴリーを形成する。
 アメリカ国防省は、ミルスペックを定め、厳しい技術要求を課し、それにクリアーした製品だけを正式採用とする。当然、腕時計にも厳しいスペックが課され、腕時計は「ミリタリーウオッチ」として進化していく。

 では、ミリタリーウオッチに求められる機能はどんなものだろう。様々な条件下で正しい時間を告げること。そして確実に時間を読み取れること。さらに厳しい使用条件を考慮すれば、耐衝撃性、防水・防塵性、耐久性などハードとしてのタフネスさも要求される。照りつける太陽、焼けた砂漠。蒸し暑いジャングル、凍てつく寒さや水の中。このリアルな兵士達が戦うアウトドアフィールドは、私たちがスノーボードやダイビング、登山やトレッキングで体験する世界に限りなく近い。求められる要求に対する具体的な形が、アウトドアウオッチなのである。刻一刻と変わる気圧や温度などの気象変化を知らせ、確実に目的地に導いてくれる。それは、単なる時を告げるだけの道具ではない。厳しい競争原理の中で磨かれ、高機能で高品質、そして安価であもるのだ。

 アメリカの警察や軍隊で使用されたことがキッカケで、逆輸入の形でヒットしたGショックなどがその好例だ。彼らの腕時計は私物を使用しているケースが多いが、ロレックスなどの高価な装飾品でも、生粋のミリタリーウオッチでもない。究極のミリタリーウオッチとは、タフで高機能なアウトドアウオッチそのものに違いない。



<そして・・・スペシャリストが選んだヴェクター>

 海兵隊のアーカイブで見つけた、ライフルを背にして屈んでいる海兵隊員の写真。彼が着用しているリストウオッチは、紛れもなくヴェクターだ。もちろん正式採用ではないが、海軍SEALチームや陸軍特殊部隊を始め、各国の兵士達に愛用されている。
 その理由は簡単で、道具としての優秀性を彼らが認めているからなのだろう。

<主な機能>
【1.時計機能】
上段に曜日、中央に現在時刻、下段に月日をそれぞれ表示。主な機能は、24/12時間表示の切替/カレンダー2089年までプログラム済み/アラーム(3つの時間が設定可能)/ストップウォッチ/カウントダウンタイマー。

【2.高度計機能】
上段に上昇率・下降率、中央に高度、下段に時刻を表示。主な機能は、高度計測範囲(標高-500mから+9000mまで)/海面レベルまたは現在地気圧からの高度計算機能/垂直上昇・下降率を毎分5m刻みで計測/高度差計測機能/24時間メモリー/ログブック機能 /目標高度到達時アラーム。

【3.気圧・温度計】
上段に温度、中段に気圧(mbar)、下段に時刻を表示。左上のボックス内には、過去6時間の気圧傾向の変動を表示する。主な機能は、気圧計測範囲:300〜1100mbr/温度計測範囲:-20℃〜+60℃/気圧・温度差計測機能/4日間自動メモリー機能(※気圧/温度センサーは本体裏側に取り付けられている)。

【4.デジタルコンパス機能】
上段に方位、中段に方位角度数、下段で時刻を表示し、外周上のセルには、北と南を表示する。コンパスはリアルタイムで方位を追従、45秒後にはスリープモードに入り消費電力をセーブ。主な機能は、方角表示/方位角度表示/水準器による高精度コンパス/磁北偏差補正/特定方位角度追従(ベアリングトラッキング)機能。

外装 強化プラスティック
強化アクリル製ディスプレイカバー
ディスプレイサイズ 直径34mm
重量 55g
使用温度条件 −30℃〜70℃
30m防水(3気圧)
バックライト機能付き
定価 32,000円
 04モデルのヴェクターは、ブラック/イエロー/タンの3色になった。ブラックだけは一見変わっていないように見えるが、文字盤の外周が白くなっているので、華やかさが違う。並べてみるとかなり雰囲気が違う。